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2006秋号

スローライフスケッチ ~いのちを包むあたたかな手~

「ひげもじゃの男がいますから」と優しく話す素朴な声そのままの、陽に焼けた柔らかな笑顔が出迎えてくれた。松浦喜英さんは七飯町に工房「塒」(ねぐら)を構える陶芸家である。朴訥とした語り口から想像も付かない程の豊富な体験談に自然と聞き入ってしまう。マレーシア奥地で自然と共生する現地の人々と暮らしたこと、世界的に有名な福岡正信氏の元、四国で有機農業を学んだ後、自身で高知県の棚田を借り2年間土と共に暮らしたこと・・・。  
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 そんな、偉大な自然と言う名のいのちと密接に関わり続けてきた松浦さんには、ふたりのお子さんがいる。ひとりめの女の子の出産に立ち会ったことが自分に とっての"お産革命"だったと言う。病院ではなく、助産婦さんのいる一軒家で、立ち膝の奥様を向かい合わせでしっかり抱きとめてその時を迎えた。次男は自 宅で、お姉ちゃんとなる当時3歳の長女もゆりおこし、家族だけで新しいいのちを迎え入れた。札幌の助産婦さんに2度検診してもらっただけで、生まれ落ちて きた子どもを受け止めたのは松浦さんの手だ。 



 今年6月に「いのちのやさしいうけわたし」という講演会が開催された。自然分娩の第1人者、産婦人科医学博士の吉村正先生によるものだ。講演が実現したのも、松浦さんを筆頭とする「いのちのやさしいうけわたしをおはなしする会」メンバーの努力の賜物である。
現在道内に「お産の家」建設を予定している岡野眞規代さんによる初回講演時から、人の本来持つ力をお産の中に取り戻すことの大切さを、多くの人にも伝えようと奔走してきた。

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  例えば、地球の重力に倣い立ち姿で出産すること。住み慣れた自宅で家族と共に赤ちゃんを迎えること。そんな自然の摂理や人間の生理とは離れた場所で、分娩 台で仰向けになり陣痛に耐え、会陰切開し、産後は母子別室で…という現実がある。しかし、人がこの世に生まれてくるということは、なにか見えない手によ る、自然そのものだ。その自然の呼吸にあわせて生まれ、生きたいと願った時、今の時代に受け継いでゆけるものがあるのではないか。そんな思いを、松浦さん は様々な形にして人々にうけわたしている。 

 そのひとつの形が、「うぶごえ」だ。様々な方の出産時の貴重な体験談などを集めたフ リーペーパーで、松浦さんらしい手書きのあたたかな文字が紙の上でいのちを包んでいる。松浦さんは言う。スローライフとは、単純にゆっくり、のんびり生き ることではないと。世代や様々な人々の間で、あるいはいのちの狭間で、うけわたしができていることなのだと。 今、スローライフという言葉の根源を、生き るということ、また生まれてくるその瞬間の意味を再度見直してみたいと思う。

(文/藤井佳子)

「うぶごえ」不定期発行中。こちらでも読めます。http://ubugoe.exblog.jp/


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