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2008年春号

編集長コラム 新たな一年の幕開けに・・・ドンドン

「1月は行く、2月は逃げる、3月は去る」といったものですが、みなさまは いかが過ごされていましたでしょうか?

逆にいうとこの3ヶ月とは非常に大事。北海道の短い夏へと向けた助走として、着実に進んでいきたいものです。

私はというと、3月2日に、金森ホールにて「ちむどんどん」という沖縄民謡のイベントを主催しました。「ちむどんどん」とは、胸がドキドキする、という意味の言葉。この日の主役である堀内加奈子に、いくつか沖縄特有の言葉を書き出してもらい、その中からしっくりとくるものを選びました。「肝どんどん」と書くように、その言葉は、心臓がドキドキするというよりも、腹の底に響くような、下から突き上げるようなパワーを感じさせるものです。つまりそこには、本来音楽と分かちがたい「ダンス」へと向けられた感覚があるように思います。

冬の寒さ、不景気、灯油の値上がり…。そんなことを吹き飛ばすように、胸の鼓動をドンドンと鳴らしながら乗りきりたいもの。この言葉を自分が気に入ったのは、そこに、素晴らしい音に出会った興奮や、踊りだしたくなるようなフィーリング、民族に脈々と受け継がれてきた伝統と誇り、温かさ、明るさ、驚き、予感と、そんな表現が当てはまるような響きがあったからです。そういう感情の最中にいる人間は、きっと、誰もが素敵に見えてしまうに違いありません。

みんながドキドキしていて、笑顔であれば、この世は最高の場所に違いありませんが、今も世界では多くのひどい出来事が起こっています。

「善が悪に勝てないこともない。ただ、そのためには天使がマフィアなみに組織化される必要がある」

昨年天に召された、とあるアメリカの作家は、こう世の中を憂いました。
だが彼はこうも書いた。

「人間は、色々なことをしゃべりますけれど、本当は、二つのことしか言っていないんです。一つは…‥」/少女は自分の胸に手を当てた。/「私は、ここにいます」/「そして、もう一つは…‥」/少女は僕の胸、すれすれに手を差し出した。/「あなたが、そこにいてよかった」

その作家、すなわちカート・ヴォネガット・ジュニアの最後に遺した『国のない男』(日本では昨年、アメリカでは2005年に刊行)が、ニューヨーク・タイムズ紙のベストセラーになったことは、この世界にとって、アメリカにとって、ひとつの明るい材料ではないでしょうか。

死後、彼のオフィシャル・ホームページ上には、空っぽになった鳥かごが、たったひとつありました。この世界に拠り所を持たなかった男は、いったいどこに飛びたったのでしょう? (文/大山 紘生)

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