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2008年秋号

編集長コーナー

Column

音楽にある情景をめぐって


この欄も、気づいたら音楽コラムのようになってしまいました。だけど、興味深い出来事は、次々と起こり後を絶たない。もうすこしこの、「いま」「ここ」で起こっているストーリーを語り続ける必要があるようです。今回は「音のなるほうへ」導かれたら浮かんできた、「音楽の情景」について。

さる8月22日、函館で不定期に開催されるライブイベント『Family Garden』と、東京の『音のなるほうへ』、2つのコンセプトを合わせたイベントが行われた。どちらも、あらゆる音楽的な要素の凝縮された空間の中で、「新しい音」がミュージシャンたちの手によって生み出されていく刺激的な場所。今回、函館山の山頂で行われたそれも、「音のなるほうへ」としか名付けることのできない、冒険心に溢れたものだった。音楽における冒険――主催者である自分もそれを簡単に「成功」「不成功」では括ることができない。ただ、自分が手掛けた中で最も挑戦的であった、ということがいえるだろう。 そこで招いたのは宝示戸 亮二(ほうじと りょうじ)というピアニスト。ピアニストといっても普通のそれではない。グランドピアノの弦に、ゴム、金属、木、おもちゃ、ガラクタなどを挟んだり乗せたりして音を変える、「プリペアード・ピアノ」という手法を用いる音楽家だ。そのようなピアノの使用法はタブーとされることが多いのは仕方のないことだが、ピアノの使用に関してはなんとかクリアでき、迎えた当日。そこで見たのはピアノの下に隠れてしまったり、ピアノから離れておもちゃやガラクタと戯れ、ときには奇声まで発する宝示戸さんの姿だった。むしろ、ピアノに触れていないときこそが活き活きしているといっていい。 もしかしたら、この人はピアニストであることを・・・。そして、ジャズであることを・・・。これも「音のなるほうへ」と向かった自然な姿と考えると、納得のいくことだ。きっと、本当に音楽のことをよく見ていて、音のひとつひとつを愛している人なのだ。終了後には、「周りで鳴っている音が全部音楽に聞こえた」という感想を何人かの人たちから聞いた。 宝示戸さんはロシアやリトアニアなど、海外の音楽祭にもよく招かれる。現地の人たちは、喜んでそれを眺めているのだろう。それは、音楽にまつわるロマンだ。 人間が海を渡って新たな大陸を目指したときに、無限の可能性への喜びと、目を塞ぐしかないような悲劇が生まれた。そこから悲劇と喜劇が果てしなく増産された。それでも音楽は再び、海を越えることを志向する。喜びと悲しみを乗せて冒険する音楽、これが音楽に抱く情景だ。 そんな残像と共に今年の夏は終わった。同じく8月の石川浩二ライブ、札幌の野外フェスティバルMAGICAL CAMP』も素晴らしい内容であったことをここに記しておきます。(文/大山紘生)

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