「羊と暮らす、暮らしをつむぐ」
一週間のうち八日曇るから八雲、と聞いたことがあるが、その日の八雲町は彼女の名前のごとくすっきりと晴れていた。
岸晴美さん。このまちで羊を飼い、その羊毛で作品を作っている。「終戦後はね、農村ではどこの家にも羊がいたんです。
羊と人とは古くから関わってきたんですよ。ウールもツイードも羊毛でしょ」。子どもの頃の経験を生かし、上ノ国小学校での教員時代、羊を育て羊毛の作品を作る体験学習を始めた。
退職の記念に学校で生まれた子羊をもらい、八雲に3000坪の土地を購入した。羊たちは、この広い牧場の川で水を飲み、ヨモギやササなど辺りの草をはむ。なんとも気ままで贅沢だ。冬は羊小屋で過ごすので、岸さんが朝夕に乾草を与え、飲み水の表面に張った氷を割ってやる。
5月は毛刈り。刈ったままの毛は皮脂や糞で汚れているので、ゴミを取り除き、洗う、梳くという手間をかけて真っ白でふわふわの羊毛にする。そこからやっと作品づくりが始まる。そして、作品の売上げは冬のえさ代に消える。「それら全てが生活なんです。キレイな糸を買ってきて作るのも素晴らしいけれど、私にとっては、ああ刈ったままでうんこがついてる羊毛がまだあるなー、早く洗わなくちゃなーって思うことも含めて、羊との生活」。
ニードルフェルトも作るし、紡ぎ車で糸も紡ぎ、編み物もする。毛糸を使うポルトガル刺繍にも挑戦中で、織物もやりたいという。それだけ何でもできるのが羊
毛の魅力だ。そしてどの作品にも、ともに日々を暮らす羊への愛情がぎゅっとつまっている。
第二の人生も十年を超える岸さんだが、
おっとりした語り口とはうらはらに、携帯やパソコンを使いこなし、ブログを開設する一面も。若々しさの理由を聞くと、「人が使っているものを自分も使わな
いうちには、死んでも死にきれないの!」と笑う。晴れた八雲で、笑顔が輝いていた。(文/丸子美生子)
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| 左/紡ぎ車で糸作り |
中央/毛糸とどんぐりが羊に変身! |
右/牧羊ポニーのプリン。
のんびりと野原を歩く羊たち |

ボラットスタッフの、なにやら楽しげな編集日記。見てね!