若造な時のホフマン映画
S&Gのコンサートの中頃、「卒業」の写真がスクリーンに映し出された。ミセス・ロビンソンで主人公ベンジャミンが腿を上げて生真面目に走るシーンが頭を過った。音楽と場面が一体化してる曲の最たるひとつだ。それで、ダスティン・ホフマンという男優の事を色々思い出しちゃった。大抜擢された「卒業」の次の「ジョンとメリー」。見知らぬ男女が朝起きて部屋を出るまでの二人だけの物語。短い時間の中で変化する感情をモノローグ、ボイスオーバーなどの映画的技法で淡々と演出。短髪のミア・ファローとの演技が見事で、この二人以外には成立しなかったと思わせる隠れた名品だ。次の「真夜中のカーボーイ」は大都会で富と名声を得ようとテキサスからやってきたカーボーイが挫折と孤独の中、肺病で足の不自由な男ラッツォと出会う。大都会のはみだし同士は次第に友情を深めていく。弱っていくラッツォのフロリダへ行く夢を叶えようとカーボーイは動くのだが・・・。これも相方のジョン・ボイトとのコンビネーションが抜群。70年代を先取りしたやるせなく、切ない感触が心に残る米ニューシネマの名作だ。ホフマンはこの後も毎年のように話題作に出演し、癖の強い役を鬼の様に演じていた。強烈な印象が残るのが10作目74年の「レニー・ブルース」だ。痛烈な風刺芸で偽善的な権力に抵抗した芸人の実話。私生活に恵まれず大衆からも見放されて死んでいく生涯をホフマンが大熱演。モノクロ、逆行線、声の質感も効いている。彼の映画は二人物が多い。S&Gも二人だ。二人いれば物語は歩き出す。しかし近頃、彼みたいにギラツイテて匂い溢れる役者が少ない感じで寂しいね。
(文/カフェやまじょう 太田誠一)

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