古木と戯れる。
ヒノキは、日本では建材として最高品質のものとされている。
正しく使われたヒノキの建築では1000年を超える寿命を保つものがあるらしい。
子供の頃、夏になると訪れていた茂辺地の親戚の家。
海岸道路を海を眺めながら走り、辿り着いた家は広くて古くて優しいにおいが
した。築100年近いその家が取り壊されると聞いて、トラックを借りて走った。 子供の頃、遠い遠い場所だったその家まではあっという間だった。
自分にとっての夏の思い出、ばあちゃんが子供の頃過ごした家、長き年月を
見つめ、そこで過ごした人々の生活をひたすら支えてきた柱や梁たち。
彼らはもう十二分に役目を終えたのだと思う。100年支えてきたのである。
そして取り壊しの日、僕はそこに立会い、木々の気持ちも考えず業者の方に頼み
取り避けてもらった。残って積まれた木々は、堅く、重く、何も語らなかった。
見つめる木々の向こうから波の音だけが聞こえてる。
そこからはじまった古木との日々。そして僕は、彼らの新たな住まいを見つけた。
運び、洗浄し、磨き、削る。何度も何度も触れる。長い年月を刻み込んだ木肌は
それだけで美しく、柔らかく、温かい。深い深いぬくもりがそこにはある。
もう役目を果たし疲れきっているのかもしれない。そんな彼らに再びがんばれと
役目をみつけ、はめ込んでしまう。計算された尽くした知恵の詰まった釘など
も使っていない古家の一部だった彼ら。その知恵には遠く及ばなくても、精一杯
向き合い、一番自然な形を考える。でもやはり、無理な力も加えてしまう。
古きものが持つ良さ。若きものが挑む懸命さ。
ヒノキのかおりを嗅ぎながら、正しい事ってなんだろう?とか、自然なかたち
ってなんだろうって考えて過ごす日々。
古木たちは何も語らず、多くを語ってくれているのかもしれない。
彼らと過ごすこれからの年月。それをまた刻み込んでゆけ。
(文/92)
◇旅の手帖◇
~旅好き編集長の旅のスケッチ~
復元されたトロイの木馬。
子供の頃に聞いたトロイ戦争の
物語を信じて遺跡を発掘した
シュリーマン。
発掘した財宝を
国に持ち
帰ったため非難も。
人生をかけて信じるのはすごい。
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