美術とはなにか?ー美術館のお仕事&ハコトリについて、などなど

19日の水曜日は、午後から美術館の主任学芸員の大下智一さんから、
美術館のお仕事と、ハコトリのお仕事などを通じてアートについての講義を受けました。
(大下さんは、おひげを生やして、いしいひさいち好きで、とてもきさくで話が面白い方でした!)

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まず美術館のお仕事について、3つの柱があるというお話をしてくださいました。

情報を守ること、人のデータ・もののデータを集めること
―函館の街にちなんだ美術や、函館でものづくりを糧に生きている人たちの活動をデータとして蓄積すること。

情報の還元
―集めたデータで展覧会を実施、作家を紹介して地元の人たちに還元すること。また、今ここで活動している作家たちに発表の場を提供すること。

ものとしての美術品を守ること
―次世代に今あるものをつないで渡すこと。収集して、展示するということ。


このほかに、大下さんは実行委員長として、ハコトリ(ハコダテトリエンナーレ、三年おきに開催される美術展、2010年が初開催、来年二度目の開催)
に関わっておられ、そのことについてもお話くださいました。

まずハコトリでは、

町で美術を展開。
具体的には古い建物をきれいにして再生し、そこで作品を展示することで、町の活性化に一役かえるのでは?という発想で活動。
そうすることで、
「美術には力がある」、世の中にとってプラスになることを示す。作られたものの持つ力を示したいという思いを表現。

また、建物の再生の中で「行為としての美術」「パフォーマンスとしての美術」ということで、白衣を着て掃除したりも。
(SARSの時期だったので、結構怖がられたそうです・・・)

こうして再生された建物が、その後実際にギャラリーに生まれ変わったりしています。
来年9月から開催のハコダテトリエンナーレも楽しみです。



そして、講義では他に、何人かの作家の作品を見せていただき、

アートとは何か?
なぜ作るのか?―純粋な美を追求することの他に、哲学・思想・意思・メッセージを造形で伝えること
、などについて話をしていただきました。
そして、芸術を志すということは、東京やニューヨークにいなくてもやれるのだ、ということ。どこにいてもできること、人の心に感動を巻き起こす行為
であるのだ、と語ってくださいました。

このあと、震災について話が及び、岩手美術館が復興支援のため一年間活動を停止するということになった、というお話から、
「このような大災害の時に、作家や美術館はどうするべきか? お金を復興にまわすべきなのか、それでもあえて作品を発表していくべきなのか」
について、メンバー全員と語り合いました。

「大変な時だからこそ、作品によって人々の心に潤いを与えるべきだ」
「作家は作品を作るのが仕事なのだから、自分の仕事を淡々と続けていけばいいのではないか」
「今すぐ作品を作るのではなく、少し時間をおいてからでもいいのではないか」
などいろいろと意見がでました。

最後に、
美術とは、視覚(形)を通じて感動を与えるという行為である。そこには幅広い可能性がある。
そして、美術に何ができるのか?―自分が作るということ、と同時にまわりの見てる人たちに何を訴えるのか、ということ
を考えていかなければいけない、というお話をしてくださいました。

これまで半年ものづくり研修をうけてきて、来月にはアートフェスにも参加します。
今回の話を通じて、ただものを言われたとおりに作るのではなく、作るという行為を通して、
何かを自分は表現しているのだ、ということをそれぞれが認識し、何を表現したいのかを考え、
そのためにさらに技術を磨いていきたいという思いにつながっていけばいいなと思いました。
しかも、それはとても楽しそうでもあるし・・・

お忙しいなか、講義をしてくださった大下さん、本当にありがとうございました!!